筆者はクリニックで大うつ病鬱病)と診断され,卒業までをどう乗り切るか,治療方法を入念に相談しました.
  それまでのストレスが大きかった事もあり,筆者の治療には時間を要すと診断されました.
  まず,大きな関門であった卒業のための論文発表を,どう乗り切るか...
  その後の空き時間で,本格的な抗うつ薬SNRIを投薬治療に導入し,段階的に増量しました.
  そして,卒業式を迎え,筆者の心は引き裂かれるような思いでした.


 

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2月 治療長期戦を決意

 1月末に,父と母にうつ病で精神科クリニックに通っていることを泣きながら打ち明けました...さすがに筆者の様子がおかしいことには気づいていた親も,うつ病で通院までしているとは思っていなかったようです.多少の混乱はありましたが理解してくれ,筆者の心の健康を第一に考えてくれることになりました.全ての出来事を伝えたわけでなく,発病のきっかけなど親も知らないのですが,それを問いただすようなことはされないので,本当に心の負担が減りました.

 2月からは,初診で診てくれたO先生から,クリニックの理事長であるH先生に代わりました.O先生はH先生の弟さんで,別の病院から臨時で週1だけクリニック診療されていました.筆者の大学側の都合で,曜日を変えたところ,これ以降は理事長(お兄さん)でもあるH先生に交代した訳です.お二人とも,意思疎通がよくされていて,また人当たりの良い方でしたので,筆者も安心して相談できました.これ以降,H先生のことを主治医,医師,先生と呼びます.

 この頃になると,論文発表会を控え大学側との連絡による負担が圧し掛かり,酷い肩こりがでるようになりました.この肩こりは以前にも経験したことがありました.冬場に毎月厳しい作業(2,3日ですが)を一人でやっていたときです.滋養強壮の市販薬を飲んでも,お風呂でマッサージしても,日ごろ体操しても治らず,1〜2週間たっていつの間にか治るけど,またその作業の日が来ると肩こりが出るのです.うつ病の場合,ストレスを受けることで肩こりなどの体に症状が出ることがあります.当時からうつ病のサインは出ていたのに気づいてなかったのです.

 また,不安感のためかイライラすることが多くなりました.そのため,先生は抗不安薬のセディールから即効性のあるソラナックスに代えてくれました.さらに,これから論文発表に向けてストレスが増大することを懸念されて,不安時用に頓服でソラナックスを余分に処方してもらいました.

 この頃治療の効果で,問診中は泣き出すことなく,慎重な面持ちで先生と対話することができていました...先生と一通り問診表にあった内容も確認し,現状報告もし,処方内容が決まってから,筆者はO先生に対して聞いたことと同じ質問を先生にしました...

 「前回の先生にも同じ質問をしましたが,先生から診て,私(筆者)のうつ病は長期戦になると思われますか?」


 「うぅ〜んとですねぇぇぇ,,,治療期間の統計データにも色々あるのだけど,うつ病は早ければ3〜6ヶ月で治る人もいるし,1年,2年とかかる人もいます.そこで僕の診立てですが,,,あなたは,まだ負担材料である大学側との接点もあって,完全に休息治療をしている体制ではないのです...それにかなり長い期間,心的苦労,強いストレス状態に曝されています...だから3〜6ヶ月とか速いペースでは完治までできると言い切れないですね...それに,完治してからも数ヶ月から1年くらいは予防治療として抗うつ薬などを飲むのが一般的なので,焦らず気長に治療していきましょう.」


 この答えを聞いて,さらに先生に相談しました.両親とも相談し,長期戦になるならば通院医療公費負担申請(通称32条:現在は自立支援法になりました)をして,治療費負担を減そうと決めていたのです. 先生に申請手続きをクリニックでするのか訊ねたところ,まず役所で専用の診断書をもらってきて,それに先生の診立てを記入することになります.それに,申請するなら,まず住民票を移さないといけませんね(笑).また,医療費軽減のため,ジェネリック医薬品(ドグマチールをベタマックに変更)の導入もしました.

 ところで,総合病院などの内科などの診察時間は10分程度です.精神科といえど,このクリニックの先生方は若いからか熱心に対応してくださる...開院間もないクリニックで患者さんが当時は少なかったということもありますが,診察時間は基本30分,のめりこむと1時間も時間を割いていただきました.

 初めて選んだ精神科心療内科クリニックだったわけですが,満足でき安心して相談できる,,,これほどインフォームドコンセントが充実したクリニック・先生に出会えた筆者は,本当にラッキーだったと思います.

 <治療費と薬代 14日分(3割負担)>
  治療費  1550円 / 薬代    1130円
  ・ベタマック50mg  3錠/日 ・ソラナックス0.4mg 3錠/日 ・レンドルミン0.25mg 1錠/日 ・プルゼニド12mg  1錠/日

2月 難関,論文発表・・・3月から本格的治療へ

人生最大の危機である論文発表をしてきました.この発表をクリアしないと,卒業は出来ません.大学側には親の介護で実家に釘付けと思われているので,発表や引越しも含め滞在期間をごく短く切り上げて,何も疑われることなく実家に帰れました.

 この期間は抗不安薬のソラナックス半錠を日4〜5回飲み,発表内容を変更するため睡眠薬も飲まず,ホテルでスライド変更の作業していました.実家にいた頃は,ソラナックス半錠を3回飲めば落ち着きましたが,さすがにトラウマ発祥地に戻ると,頭が活動する分,ストレス負荷が非常に高くなっていたんでしょう.何よりも,自分が『正常』であるんだと,演じているわけですから...

 それでも,まだ自分の関わってきたことを発表するため,その瞬間には『うつ病患者』とは思えないような集中力が出せ,思ったよりまとまった原稿になりました.自分でも想定していたよりすっきりした気分でした.

 ですが,発表会が終わると,もうここに居たくない・あの人の顔を見たくない・早く実家に帰りたい,と不安焦りが現れ,急いで予定を切り上げて帰省をしたほど,感情が激変しました.

 実家に帰ってからは,直ぐにクリニックへ行き,大学での自分の豹変振り・・・大学関係者の前では整然と振る舞い,発表直後に急激な不安『もう正常な自分を演じられない』に襲われたこと・・・を説明しました.とにかく,来月からは本格的な治療に移行することを前提に,クリニックの先生に相談し,まずは32条(当時の自立支援法みなし認定)申請を推し進めたところ,3月の治療からは3割負担から5%負担に軽減できます(4月からは自立支援法に移行したので,1割負担になりました).



 3月からは,もう卒業式しか行事はありません.本当に開放されたような気分でした.そして,ほぼ完全休養が取れる時期に入ったので,ドグマチール(ベタマック)主体の治療から,新薬のSNRIのトレドミンを使った,本格的な投薬治療に移行することを,医師と相談して決めました.

 本格的な投薬治療にするとき,筆者は他の方の闘病記を読んで,三環系の抗うつ薬を使って欲しいと相談しました.しかし,先生は次のように説明してくださいました.

 「三環系の抗うつ薬は確かに効き目は強いけれど副作用も強い.しかも微妙な調節次第で 「躁転」 する確率も高いから,僕はお奨め出来ないな...」...「あなた(筆者)は色々調べられてるからご存知かもしれないし,教科書的・一般的な処方なんだけれど,まずSSRIやSNRIから始めるのがいいでしょう...これらは三環系並の作用があるし,効き目も早い.しかも,例えば心機能障害といった副作用が弱くなっているんですよ...あなたの場合,やる気とか意欲もあげてくれるSNRIのトレドミンがいいね.」

 それから抗不安薬のソラナックスからメイラックスへの移行を提案されました.理由は短時間強作用のソラナックスは確かに効くが依存性も強く,薬を減らすとき体が過剰反応してしまうこと.一方メイラックスなら,作用時間が長いので(半減期120時間),最初は作用が弱いけど,飲み続けることで徐々に血中濃度が高くなり,時間が経つほど十分量が体内で作用します.逆に投薬量を減らすときも徐々に血中濃度が薄まるから,離脱作用が少ないのです. ですので,メインの抗不安薬はメイラックスを使い,ソラナックスはパニック発作時などの頓服として処方されるようになりました.

 ちなみに,2月までは睡眠薬が作用の弱いレンドルミン(レンデム)でしたが,薬慣れしてか,眠れなくなってしまったので,作用の強いハルシオンに変えてもらいました.

 こんなやり取りがあり,3月の間に,10日ごとクリニックに赴き,トレドミン25mgを1日2錠から始め,月末の卒業式までに1日4錠100mgまで増量しました.3月に4回通院しましたが,この月は32条が適用されているので,5%負担で一気に治療を進めたので,若干経済的に負担が軽く済みました.4月からは1割負担に増加するので,また治療費が増えてしまうのが残念でした.


 <治療費と薬代 14日分(5%負担)>
  治療費  260円 / 薬代    352円
  ・トレドミン25mg  4錠/日 ・ハルシオン0.25mg 1錠/日 ・メイラックス2mg 1錠/日 ・プルゼニド12mg  1錠/日 
  ・ソラナックス0.4mg 10錠(頓服) 



 実家に帰ってきて,クリニックに駆け込んだ日,近くの本屋さんに久しぶりに足を運びました.多くのうつ病の参考書が出版されていて,立ち読みするには疲れてしまうので,もう1冊購入することにしました.1冊目のうつ病は治る―患者さん・ご家族のために は少々学術的な内容が含まれていて,難しい個所もありました.今回は家族が読んでも分かりやすそうな,図解式の本を手にとって書籍名を確認し(ポイントがあったのでネットで)購入しました.

 スーパー図解 うつ病―見ればわかる 心を元気にする知識と方法うつ病を専門とされている野村 総一郎先生の著書だったので,かなり信頼のおける情報が多かったですし,何より図が多くてわかりやすかったのが家族受けしました.また「ストレス耐性を高める生活」の章は参考になりました.鬱の本当の回復というのは,気になること(ストレス)があっても,それをスルーできるようにならなければ,また再発してしまうのだなと,うつ病の解消の難しさを感じました.



卒業式・・・こんなにも辛いとは思っていませんでした

 2006年3月後半...大学院の卒業式へ父同伴で行きました.

 学生の参列場でなく観覧席から父とともに式を見ていました.

 大学総長の式辞などでは,もう胸が張り裂けそうで,急いで頓服の抗不安薬のソラナックスを半錠飲みました...


 「私は今までの過ちでこんな病気にかかり,今は学生としてではなく観覧席という遠い位置にいる...たとえ有名大学院を今日卒業したとしても,それは形ばかりで,結局大学での人間関係や信頼を断ち切り,ここの大学院とは無縁の存在である...」

 代表として修了証書を授与されていく学生達と観覧席にいる自分との距離があまりに遠すぎて,涙が込み上げてくるのを必死で抑えていました.これほどまでに辛く,,,苦しむことになるとは思っていませんでした...


 昼食時にソラナックスをさらに半錠飲み,午後は研究室へ挨拶に行きました.

 「ここの人たちは,私が病気であることを知らない...」

 筆者は親の介護という名目で研究室を留守にしていたので,みんな平然と筆者を迎えてくれます.

 実際みんなに会うとさっきまでの不安はなくなり,元気な自分を自然に(いえ多少過剰なくらい)演じているのです.正直,錯乱するんじゃないかと思っていたほどで,自分の心理状態のギャップに自分で驚くほどでした.写真撮影や花束贈呈などすまして,別館で待っていた父と合流して無事帰路に着くことができました.



 そして帰省後,クリニックの先生に経緯を説明しました. 「随分大変な思いをしたようですね.でもこれで,不安材料はほぼ無くなる訳ですから,これからは安心して休息治療に専念できますね.」 という先生の一言で何だかすっきりしました・・・

 4月からは,治療に専念します.完全な休息を取ることを心がける事ができるかどうかで,治療効果の得られ方も随分と変ってくるそうです...ですが,4月には,うつ病治療中の筆者にとっては,大きな出来事が待っていました.


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