私が大うつ病鬱病)と診断された理由には,こんな背景がありました.
  長年の孤独・自暴自棄から抜け出せず,4〜5年はほぼ仮面うつ病状態で,一筋の希望を頼りに生きていました.
  そして,そのほんの一筋の希望すら無くなった時に,私は引き篭もり状態に陥り,どうしようもない絶望感に苛まれました.
  実家に逃げ帰ってからも,トラウマとの接触が私をより追い詰め,ベッドからも這い上がれない状況になりました.
  そして,自分がうつ病ではないかと思ったとき,病院へ行こうと決意しました.


 

TOP > 闘病記 > 初診を受けるまで  

2005年秋までの出来事・・・

 私は大学から研究生・大学院の6年間,5歳年上のTさんと交際していました.
 そして20歳,22歳に2人の子供を授かりましたが反対されて中絶しました.
 このころから,どうやらうつ病のサインが出ていたようです.

 某有名大学に進学し忙しい彼には,心配をかけれず相談もしづらく,私は心の悩みを一人で抱え込んでしまいました.
 夜になれば,子供への罪悪感や喪失感でいっぱいで涙が止まらない日が続き,そのうち,朝から晩までそんな状態で,
 卒論時期でも2週間風邪と偽って休んだほどでした.


 卒業後,私自身も彼と同じ研究室に進学し,気分も新たに研究や私生活が送れると思っていました...


 しかし現実は,彼と研究室のある先輩との噂話にさいなまれ(実際,噂ではなかったのだけれど),
 それでも彼の言葉を信じて,すがる思いで3年間生活してきました.



 事実,その先輩が留学中には,とても幸せな時間が流れました...



 しかし,問題の先輩が留学から戻ってきた年から事態は悪化しました.



 彼となかなか連絡が取れなくなり,9月にはあの先輩を相手に彼に二股かけられていたことが明確になり,彼との間にあった幸せも,すがるものも,何もかも失い,私のすべてが打ち砕かれてしまったのです.


 いったんはプライベートと研究生活は別物だと割り切って,大学で平然と研究生活を過ごせました.
 しかし,とたんに理性が保てなくなり,またも朝から晩まで泣き崩れ,大学にも行かず,目が覚めれば死ぬことを考え,泣き疲れたらアルコールで眠り,また目が覚めれば...の繰り返しの毎日を過ごすようになりました.



 このままこの地にいれば,おそらく自殺を実行してしまう...



 かすかな理性を頼りに,大学側に『親の介護』と大嘘をつき,10月に実家に戻ってきました.おかげで,少しストレスから解放されたように元気になり,しばらくは高校時代の友人にも会うことができました.


 けれど,死神は年末から襲ってきました...


 修論準備で,先生やあの先輩から連絡が来るたび,研究室への不安だけでなく,また,子供を失ったこと,彼を失ったこと,さらに自分の大学での信頼や業績までふいにしたこと... 一方であの先輩を恨むつもりはないのに,結果として研究上,仕事を彼女らに押し付け迷惑をかけたことへの罪悪感... 数限りない悲しみ辛さ罪悪感,喪失感とともに涙が溢れ出し,死という言葉が何度も脳裏をよぎるんです...



 そして2006年になり,1月,家族に泣き顔をみせるわけにもいかず,
 1週間ベッドから出ることすらできなくなってしまいました...
 理性で感情のコントロールがここまでできなくなってしまった,もう病院へ行こうと考えたのです.



病名・病院探し・・・

この時点では実家に戻っていたといっても,親は私の身の上に何がおきているか知りませんでした.自分が抱えている悩みや,多くの人に大嘘をついている罪悪感など,一切のことを一人で抱え込めず,かといって親にも相談できるような器用さはありませんでした.


 私には統合失調症月経前不機嫌性障害などで,普段から精神科に通っている知人がいます.そのこともあって,躊躇なく精神科の病院の受診を決意していました.また,一時テレビで啓発CMで『うつ病』について放送しているのを見たことがあったため,ネットサーフィンをして自分がうつ病なのか,患者の人はどんな様子なのか,また治療にはどれくらいの時間がかかるのか,,,気になることを夜な夜な検索しました...


 自分の症状...涙が止まらない,自責の念でいっぱいである,午前中は抑うつ状態であっても夕方には若干の活動は出来る,,,これらはネットで調べたうつ病の患者さんの症状とも合致しました...この時点で躊躇い無く,自分がうつ病であると確信しました.


 ただ,私はこの3月に卒業するわけですから,何かしら大学側には就職先を伝えねばなりませんし,その前に修論提出・発表会を無事に通過できるかすら危うい状況です...鬱患者さんの闘病記を参考にしていると,復職や社会復帰に耐えれるまで回復するには時間がかかっているのが判りました...治療を開始して2〜3ヶ月でこの病気が完治することは無いだろうと,腹をくくりました.とにかく,卒業までなんとか乗り切りたい,,,それが第1目的.そして,治療をしながら就職活動や派遣社員でもいいので,何かしらの職に就くための心的ケア・サポートが受けれれば良いなと,治療への希望を垣間見ていました...

 なお,治療するにあたって,どの病院へ行くか...うつ病ならばメンタルヘルス心の病を扱うわけですから,医師との相性が良いところのほうが理想的です.しかし,事前に医師との相性までは確認できません.あえてHPに掲載されている医師の顔を見て,自分が信頼できるかどうか,,,また男性医師が多かったので,付き合っていた彼の面影のある医師のクリニックは避けました...自宅近くに総合病院がありますが,そこでは両親やご近所さんに遭遇する確立が高いので,やはり避けました.ネット検索で通える範囲の病院・クリニックをあらかた調べましたが,ネット情報だけで相手を信頼できるか一抹の不安が残りました.


 たまたま,新しくなったタウンページがきていたので見てみると,比較的最近に開業したという精神科・心療内科のクリニックの大きな広告があり,HPで確認した院内風景もきれいだったので,とある大きめの街のAクリニックに目星をつけました.それから,実家のある市内で大きな個人医のとある医院もチェックしました.

 ただ,この時期の私は朝は涙が止まりませんが,夕方には落ち着くので,この時には電話するのを躊躇い,もうしばらく様子を見ることにしました.

 

初診・・・

2006年1月17日...ちょうど淡路・阪神大震災を思い出す日でした...
 目覚めると,涙が止まらず,死ぬことばかり考える不安な一日が始まりました.特に午前中はうつ状態がひどく,もうこれ以上は本当に危険,,,命を絶つかもしれない,,,と思うほど泣きながら切羽詰ったこの日,病院へ行くことを決意しました.

 まず,車でいける距離の市内の医院に電話すると予約でいっぱいとのこと.絶対に今日行く,と決めていたので,次に新しめの街のクリニックに電話しました.このクリニックは先月末に開業したこともあってか,今日でも見てくれるというので午後に予約をいれ,親には友人に会いに行くといって外出しました.

 目を真っ赤にした私は,そのクリニックに到着してから,受付で手続きをし,ゆったりとしたソファーで院内のクラシックを聞きながら問診表を書きました.症状やアレルギーの有無など定例の質問に答え,私のこれまでの出来事や傷心,またこれから卒業するまでの3ヶ月間をどう乗り切るかという不安を書きました.


 しばらくすると診察室に呼ばれ,思っていたよりも若いO先生が診察してくれました.まず先生は現在の症状を聞き,いくつか質問を始めました...睡眠,食欲,不安感について,潔癖症であるか,突然のめまいや吐き気はあるか,動悸やふるえはあるか,などなどです.


 一通り終えたあと,先生いわく,

  「今の質問は,あなたがうつ病パニック障害かを判断するものです.
                       そしてあなたの場合,,,うつ病と判断できるでしょう.」

 さらに先生は,「発病のきっかけや背景を知りたいので個人的なことを教えてください.でも,話したくないことならば,話さなくても結構ですよ」とおっしゃったので,問診表で書ききれなかったことを,泣きながらできるだけ吐き出しました...


 その後にゆっくりと先生は,「あなたはこれまで多くの出来事に悩み,しかも学校の友人や家族にすら相談できない状態でしたね.随分と長い間,,,ダメージが大きい精神的ストレスを溜め込み,さぞ辛かったでしょうね.」とおっしゃり,そのとたん私は一気に涙が出ました...

 しばらくして,「あなたは長期間,うつ状態を放置してしまったから,おそらくその分,,,治療は長期戦になると思います.就職活動のことも,今はちょっと置いておきましょう...けれども,安心してください.今は抗うつ薬で十分治療できるから,きっと回復できますよ.」... あらかた説明してこの言葉を聞いて落ち着いた私は,先生と今後の相談をしました.まだ,卒業までに論文をなんとか発表しなければなりません.先生は,精神病薬ビギナーの私に,普段は論文書きができるよう眠気の少ない抗うつ薬を処方をしてくれ,まず1週間,薬が体に合うか経過観測することになりました.


 <治療費と薬代 初診7日分(3割負担)>
  治療費  2530円 / 薬代    790円
  ・ドグマチール50mg  3錠/日  ・セディール5mg    3錠/日  ・レンドルミン0.25mg 1錠/日


 初診が済んでから,私はネット情報だけでなく,うつ病についての参考書を読むことにしました.ある医師のHPで「専門的なことから身近なこと,家族の対応,患者さんのすべきこととすべきでないこと」などが網羅されていると評された, うつ病は治る―患者さん・ご家族のために という本をネット購入しました.

 引きこもり状態の私は何度も読み返しました.必要な箇所は家族にも読んでもらいました.なぜなら,自分の病気について正しい理解をしなければ,タブーばかりを起こして,良くなるものも治らないかもしれない、ということをこの本から学んだからです.家族にどうしてもらうと良いのか,患者として何に気を付けるべきなのか,そして何よりも,うつ病は適切な治療によって回復するのだという安心を得ました.